弁護士・裁判官・検察官になるには?司法試験の制度から合格後の進路まで徹底解説

こんにちは、予備校比較マニアのまさちゃんです。

法律のプロフェッショナルとして活躍する法曹三者(弁護士、裁判官、検察官)を目指すための関門が「司法試験」です。そしてその司法試験の受験資格を得るためには、「法科大学院を修了する」か「予備試験に合格する」という2つのルートがあります。

「司法試験ってどんな試験なの?」
「法科大学院と予備試験、どちらのルートがいいの?」
「合格後はどんな進路があるの?」

この記事では、司法試験・予備試験に関する基本情報から試験内容、合格後の進路まで、これから法曹を目指す方に必要な情報を徹底的に解説していきます。

2020年からは大学法学部に「法曹コース」が新設されるなど、法曹養成の制度は大きく変化しています。最新の制度を理解した上で、自分に合ったルートを選択していきましょう。

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目次

司法試験制度とは

それでは、まずは司法試験制度について見ていきます。

司法試験は、法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)になるための国家試験です。かつては司法試験を受験するのに資格は必要ありませんでしたが、2006年に始まった新司法試験では「法科大学院の修了」または「予備試験の合格」が必要となりました。

つまり、法曹を目指すには以下の2つのルートがあります。

法科大学院ルート

  • 法科大学院に入学(2年コースor3年コース)
  • 法科大学院を修了
  • 司法試験を受験

予備試験ルート

  • 予備試験を受験(受験資格の制限なし)
  • 予備試験に合格
  • 司法試験を受験

どちらかのルートで司法試験の受験資格を得て受験。合格を勝ち取ったら1年間の司法修習を経て、晴れて法曹として活動することができます。

それぞれのルートのメリット・デメリット

法科大学院ルートのメリット

  • 体系的な教育カリキュラム
  • 充実した学習環境
  • 仲間との切磋琢磨
  • 実務家教員による指導

法科大学院ルートのデメリット

  • 学費が高額(2年で約300万円程度)
  • 修了までに2〜3年必要
  • 入学試験への対策が必要

予備試験ルートのメリット

  • 経済的負担が少ない
  • 最短での合格が可能
  • 受験資格に制限がない
  • 合格者の司法試験合格率が高い

予備試験ルートのデメリット

  • 独学での勉強が中心
  • 体系的な学習が難しい
  • 予備校などの費用も必要
  • 合格率が低い(約4%)

2020年からは法学部に「法曹コース」が新設され、大学3年+法科大学院2年の5年一貫教育も可能になりました。このように法曹養成制度は進化を続けていますが、どのルートを選ぶにせよ、最終的には司法試験という関門を突破する必要があることは変わりません。

司法試験の試験内容

司法試験は「法律のプロフェッショナル」としての知識と能力を判定する試験です。具体的な試験内容を見ていきましょう。

受験資格と受験期間

司法試験を受験するためには、以下のいずれかの資格が必要です。

  • 法科大学院修了者
  • 法科大学院在学中の者(最終学年で学長認定を受けた場合)
  • 予備試験合格者

受験資格を得てから5年以内に5回まで受験することができます。この「5年5回」という制限はとても重要で、この期間内に合格できないと再度受験資格を得る必要があります。

試験科目と配点

司法試験は短答式試験と論文式試験の2種類があり、以下のような内容となっています。

短答式試験(175点満点)

  • 憲法(50点)
  • 民法(75点)
  • 刑法(50点)

論文式試験(1400点満点)

  • 公法系科目(憲法・行政法)
  • 民事系科目(民法・商法・民事訴訟法)
  • 刑事系科目(刑法・刑事訴訟法)
  • 選択科目(8科目から1科目選択)
    →倒産法、租税法、経済法、知的財産法・労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)

実施日程と合格率

司法試験は毎年7月中旬に4日間かけて実施されます。

  • 1〜3日目:論文式試験
  • 4日目:短答式試験

2024年は3,779人が受験し、1,592人が合格。合格率は42.1%でした。かなり高いですが、そもそも受験資格を得るのが大変であることは忘れずに。

なお、予備試験合格者と法科大学院修了者では合格率に差があり、予備試験合格者の方が高い傾向にあります。後ほど説明します。

合格に必要な得点の目安

司法試験は相対評価の試験なので、合格ラインは年度によって変わります。目安としては以下になります。

  • 短答式試験
    →60〜65%の得点で合格ライン
  • 総合得点
    →50〜55%程度の得点が必要
  • 足切りライン
    →短答:各科目40%
    →論文:各科目25%

1科目でも足切りラインを下回ると、問答無用で不合格となります。

予備試験の試験内容

予備試験は、法科大学院修了者と同等の学力があるかを判定する試験です。誰でも受験可能なため、法曹への「最短ルート」となります。

受験資格と試験の流れ

予備試験の大きな特徴は、受験資格に制限がないことです。

  • 年齢制限なし
  • 学歴不問
  • 国籍不問
  • 受験回数の制限なし

試験は以下の3段階で実施されます。

  1. 短答式試験(7月中旬)
  2. 論文式試験(9月上旬)
  3. 口述試験(翌年1月)

それぞれの試験に合格しないと、次の段階に進めません。また、不合格の場合、翌年は再び短答式試験からのスタートとなります。

試験科目と内容

短答式試験(270点満点)

  • 法律基本科目(憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法):各30点
  • 一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学、英語):60点

論文式試験(500点満点)

  • 法律基本科目(憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法):各50点
  • 法律実務基礎科目(民事、刑事):各50点
  • 選択科目(8科目から1つを選択):50点
    →倒産法、租税法、経済法、知的財産法・労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)

口述試験

  • 法律実務基礎科目(民事、刑事)
  • 2日間にわたって実施

合格率と合格ライン

近年の実績を見ると、予備試験の合格率は以下の通りです。

  • 短答式試験:合格率約20%
  • 論文式試験:合格率約18%
  • 口述試験:合格率約95%
  • 最終合格率:約4%

合格ラインの目安は以下の通りです。

  • 短答式:60%程度の得点
  • 論文式:50%程度の得点
  • 口述試験:基準点を超えれば合格

予備試験合格者の特徴

予備試験合格者は、その後の司法試験でも高い合格率を誇ります。近年の実績だと以下の通りです。

  • 司法試験合格率:90%以上
  • 法科大学院修了者の合格率:40%程度

予備試験は合格率4%程度の難関試験ですからね。ここを乗り越えてきたということは、既に高いレベルの法律知識が身についているということ。まずはここを目指していきたいですね。

法科大学院(ロースクール)について

法科大学院は、2004年にスタートした法曹養成のための専門職大学院です。実務を意識した体系的な教育を通じて、質の高い法律家を育成することを目的としています。

2つのコース

法科大学院には、入学時の法律知識によって2つのコースがあります。

既修者コース(2年制)

  • 法律の基礎知識がある人向け
  • 入学試験で法律科目の試験あり
  • 法学部出身でなくても受験可能
  • 2年間で修了

未修者コース(3年制)

  • 法律の知識の有無は問われない
  • 入学試験は小論文が中心
  • どの学部出身でも受験可能
  • 3年間で修了

2020年からの「法曹コース」制度

2020年から、法学部に「法曹コース」が新設されました。以下のような制度です。

  • 大学3年+法科大学院2年の5年一貫教育が可能に
  • 時間的・経済的負担を軽減
  • 法科大学院入試で特別選抜枠あり
  • 早期から実践的な法学教育を受けられる

法科大学院の入試

法科大学院の入試では主に以下が課されます。

  • 自己評価書
  • 法律科目試験(既修者コースのみ)
  • 小論文(未修者コースが中心)
  • 面接
  • 語学力(語学能力を示す資料の任意提出が多い)

メリット・デメリット

メリット

  • 体系的な学習が可能
  • 実務家教員による指導
  • 充実した学習環境
  • 仲間との切磋琢磨
  • 就職支援が手厚い

デメリット

  • 学費が高額(2年間で約300万円)
  • 時間的な拘束が大きい
  • 入学試験の準備が必要
  • 修了までに2〜3年必要

法科大学院は予備試験と比べると時間的・経済的コストは大きくなりますが、法律家としての基礎を確実に身につけられる環境が整っています。

合格後の進路

司法試験に合格すると、まずは1年間の司法修習を経て、その後、法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)として活躍することができます。それぞれの仕事内容と特徴を見ていきましょう。

司法修習とは

司法試験合格後は、以下の流れで法曹への道が続きます。

  • 合格発表(11月)
  • 司法修習開始(翌年)
  • 二回試験(司法修習生考試)
  • 法曹資格取得

司法修習では、裁判所・検察庁・法律事務所で実務を学びます。修習終了時の二回試験に合格すると、晴れて法曹としての道が開かれます。

弁護士の仕事内容

弁護士は、一般の方がイメージする「法廷での弁護活動」はもちろん、離婚や相続、交通事故の示談交渉といった身近な問題の相談から、企業の法務アドバイス、知的財産権に関する交渉、国際取引のサポートまで、実に多様な分野で活躍しています。近年では企業の法務部門で働く「企業内弁護士」も増加傾向にあり、活動の場はますます広がっています。

裁判官の仕事内容

裁判官は、社会で起こる様々な紛争を、憲法と法律に基づいて公平に判断する重要な役割を担っています。民事事件や刑事事件の判断はもちろん、裁判員裁判での市民との協働など、その職務は多岐にわたります。また、外交官として外国の大使館で勤務したり、各省庁で法的なアドバイザーとして活動したりすることもあります。一つひとつの判断が社会に大きな影響を与える分、責任は重大ですが、それだけにやりがいのある仕事です。

検察官の仕事内容

検察官は、刑事事件の捜査や公判維持を担当し、社会正義の実現を目指す職業です。事件の大きさに関わらず、一つひとつの事件を丁寧に扱い、被害者の権利を守りながら、適切な処罰を求めていく仕事です。裁判官と同様に、外交官として活動したり、省庁で法務のスペシャリストとして活躍したりする機会もあります。

その他の進路

法曹資格を活かして、以下のような道も選択できます。

  • 企業の法務部
  • 官公庁の法務担当
  • 大学教員
  • マスコミ関係
  • 政治家

活躍の幅は広いですね。

合格に必要な学習時間・期間

司法試験・予備試験は、日本でも最難関と言われる国家試験の一つです。合格に必要な学習時間と期間について、具体的に見ていきましょう。

必要な学習時間

一般的に、予備試験を経て司法試験に合格するまでに必要な総学習時間は約3,000時間と言われています。日数に換算すると以下になります。

  • 1日8時間勉強して約375日分
  • 1日4時間勉強して約750日分
  • 1日2時間勉強して約1,500日分

もちろんこの3,000時間という数字はあくまで目安であり、個人の学習効率や法律の知識量によって変動します。しかし、これだけの学習時間が必要となる以上、効率的な学習方法を選択することが重要であることは言うまでもありませんね。

その意味で、予備校の活用は積極的に検討、というよりほぼほぼマストです。

予備校を使うメリット

予備校のカリキュラムを利用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 効率的な学習が可能になる
  • わかりやすい講義が受けられる
  • わからないところを質問できる
  • 添削指導による答案作成力アップ
  • 周りの受講生からの刺激がある
  • モチベーションの維持

実際に多くの司法試験受験生が予備校を使っていて、例えば2024年の司法試験の合格者1,592名のうち、1,436名が伊藤塾の受講生でした。

有名どころだと伊藤塾、アガルート、資格スクエア、スタディング、LECなどですが、それぞれの予備校に特徴があり、料金体系や学習スタイルも大きく異なります。

予備校の選び方について、別記事「司法試験・予備試験の予備校比較」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

よくある質問と回答

司法試験・予備試験について、よくある質問に回答していきます。

Q. 法学部以外でも受験できますか?

A. はい、可能です。予備試験は受験資格の制限が一切なく、法科大学院も法学部出身でなくても受験できます。むしろ他分野の専門性を持っていることは、法曹になってからの強みになることもあります。

Q. 社会人でも合格できますか?

A. はい、毎年多くの社会人が合格しています。仕事との両立は大変ですが、予備校のWeb講座の活用や隙間時間の学習で対応可能です。ただし、ある程度の学習時間の確保は必須です。

Q. 学生のうちに受験するメリットはありますか?

A. はい、大きなメリットがあります。時間を確保しやすく、学習に専念できる環境があります。また、2020年からスタートした法曹コースを活用すれば、最短5年で法曹を目指すことができます。

Q. 独学での合格は可能ですか?

A. 理論上は可能ですが、現実的にはかなり難しいです。司法試験の合格までには約3,000時間という膨大な学習時間が必要と言われています。効率良く学習しないとさらに学習時間が嵩みます。予備校などの活用をおすすめします。

Q. 予備試験と法科大学院、どちらがおすすめですか?

A. 一概には言えませんが、予備試験ルートをおすすめします。近年、予備試験合格者の司法試験合格率は90%以上です。法科大学院修了者(40%程度)を大きく上回ります。費用面でも、法科大学院の学費(約300万円)に比べて予備試験ルートは予備校費用を含めても150万円程度で済みます。よって、予備試験ルートがおすすめです。

まとめ

というわけで今回は、「弁護士・裁判官・検察官になるには?」というテーマで司法試験の制度から合格後の進路までを解説しました。

弁護士・裁判官・検察官になるまでの道のりは険しいですね。司法試験は難関ですし、その受験資格を得るまでのハードルも高いです。ですが効率良く学習すれば、決して手の届かない試験ではありません。

その効率の良い学習は、予備校に通うことで手に入ります。以下に参考として「司法試験・予備試験の予備校比較」の記事を置いておきます。合格実績や費用、サポート制度や評判をまとめたものです。ぜひ活用してみてください。

この記事が皆さんの道標となれば幸いです。

頑張ってください!

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